コラム

プロフィール

大沼 幸江

  • 足育研究会 フットウェア部会 理事
  • Nature’s walk 株式会社 代表取締役
    (足と靴の技術専門店ネイチャーズウォーク運営)

19年間の雑誌社編集部・出版部勤務を経て、2008年フリーライター兼、ドイツ人整形外科靴マイスターKarsten Rieche主宰の「整形外科靴工房R・I・O」マネージャーに。2013年Rieche と共同で足と靴の専門技術を提供し技術者を育成するNature's walk株式会社を設立、同取締役就任。マイスターの通訳兼アシスタントとして、全国のコンフォートシューズ専門店、靴メーカー等の開発・技術指導に携わるほか、千葉市中央区の「ネイチャーズウォーク本店」を企画・統括マネージメント。2015年月刊デーリィマン誌において「足元からの健康管理」連載執筆中。


「靴型装具」とは?(2023/09/12)

下肢、主に足の変形の矯正と、それに伴う疼痛などを和らげる目的で用いられる靴の機能を持った装具が「靴型装具(製作過程によって特殊靴・整形靴に分かれる)」なのですが、皆さんは「靴型装具」と聞いて、どんな見た目や印象をお持ちでしょうか?

「支柱の付いたロボットみたいな靴」「いかにも障害者と分かる見た目で履きたくない靴」など、病院の患者さんや障害者手帳を持っている方々から聞く実際の声です。

見た目以外には「重い」「足に合わない」などの声もよく聞かれます。

そして「作ったけど履いていない(履けなかった)」など。

そういった残念な結果から、「靴型装具を止めて、短下肢装具(注1)に戻した」という方も。靴型装具は、本当にそんな中途半端な装具なのでしょうか?

もしかしたら、靴型装具が得意な技術制作者に当たっていないだけかもしれません。

医療靴の先進国であるドイツでは、体全身の装具を担う義肢装具士とは別に、「靴型装具」など膝から下、主に足のトラブルのみを専門に担う整形外科靴マイスターという国家資格があります。

私たちネイチャーズウォークは健康靴店の他に、ドイツの整形外科靴マイスターであるカーステン・リーヒェ指導の下、義肢装具士が中心となり靴型装具を専門に扱う装具部門が有ります。

日本では、例えば内反足や下垂足、片麻痺、小児麻痺、尖足などで短下肢装具や支柱付きの靴型装具を処方されることが多いようですが、これらのケースは、全て写真のような靴型装具でも対応が可能なのです。

靴型装具の機能性を最大限に発揮するために、多くは足関節の矯正が可能なブーツタイプになりますが、サンダルも含め、スニーカーや仕事にも履ける革靴タイプなどデザインも豊富に選べます。

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靴型装具の最も優れているところは「矯正や痛み緩和のための装具部分を靴の中に隠せる」こと。

それで見た目がすっきりします。

もちろん足裏や踝など痛みの出やすい繊細な箇所には硬い素材が当たることなく、クッション性に優れたやさしい履き心地も同時に手に入ります。

当社で製作するドイツ式の靴型装具には、製作目的(足のトラブル・主訴)によって靴の中に装着する装具のタイプが変わります。

概ね、足底潰瘍・足裏の疼痛が主訴の足底板タイプ、内反・外反足タイプ(写真①)、前足部切断(欠損)タイプ(写真②)、尖足や脚長差タイプ、小児麻痺・片麻痺などのタイプ(写真③)、に分かれます。

足の変形や歩行機能に重度な問題がある方はギブス採型により、ラスト(足型)からすべて技術者が手作業で製作する特殊靴にしますが、靴を採寸のパターンオーダーで製作する整形靴でも、同様にドイツ式の装具は装着可能です。

装具名としては「靴型装具」一つでくくられますが、一人一人千差万別な足の形・機能に合わせ手作りするので、一つとして同じ靴は存在しません。

既製品や硬い装具と違い、足にフィットして履き心地良く、履く方が望まれる効果・機能性も十分に発揮できます。

そして、何より私たちが一番嬉しいのは、履く方と一緒にデザインや革選びをし、例えば手の不自由を補って靴を履けるよう、持ち手も飾りの様に見せられないかなど、一緒にデザインを考え完成し、履き心地とともに、見た目でもとても喜んでいただけたときです。

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(注1) 「短下肢装具」とは、下肢から足部にかけての障害や機能低下に対し補助や矯正を行うための下肢装具の1つで、足関節の固定や背屈の補助を行うもの。図のような種類がある。


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