コラム
プロフィール
林美香 医師
- ニューヨーク初 日系足専門病院「林美香足病科クリニック」院長
- ニューヨーク大学附属関節専門病院スタッフ
- 米国足病医学会公認専門医
- 米国足病医学協会会員
- ニューヨーク州足病医学協会会員
林美香足病科クリニック
350 Lexington Avenue (40th Street)Suite 501,
New York, NY 10016
webサイト
たかが足、されど足(2015/05/12)
お腹が痛いとすぐにお医者さんに行くのに、足が痛い時はそのまま放置してしまう方が日本でも多いかと思われます。また、高山先生の話では、日本での「フットケア」は健常者に対してのケアではなく、糖尿病患者に対してのケアを指すことが多いようです。
こちらアメリカ、またヨーロッパは「靴社会」なので、足の悩みを持つ方も多く、昔から足の治療に対するスペシャリスト「足病医」が存在します。治療範囲は州によって少しの違いはありますが、一般に足病医は膝下の下肢の問題をケアする専門医で、水虫・いぼ等の皮膚疾患の治療から、怪我などによる整形外科的疾患の内科外科的治療、そして糖尿病による血流障害や神経障害等の治療まで多岐に渡ります。
「Orthopod 」とは足専門の整形外科医で、足の骨折等の手術的治療を中心に行います。一方、足病医「Podiatrist」は手術的な治療も行いますが、糖尿病の創傷ケアのみならず、健常者のための足底板の処方、爪・タコのケアなどの非手術的治療や予防にも力を入れています。
足病医の間でも専門があり、「小児の足病医」、「スポーツの足病医」、「創傷ケアの足病医」、「外科的の足病医」など多岐に渡ります。私のクリニックはマンハッタンのミッドタウンにあるため、主な患者様の層はオフィス街の方々、若いダンサーやスポーツ選手などの健常者が大半で、逆に糖尿病をお持ちで創傷ケアが必要な方は少人数です。特にダンサーの方は、毎日ブロードウェイでパフォーマンスを行わなくてはならないため、一般の患者様のように「治るまで休みなさい」と言えないのが現状です。舞台に出ながらどのように治療を施すかというのが、この「スポーツ医学」のユニークなところでもあり、難しいところでもあります。
また私のオフィスは国連に大変近いため、世界各国から患者様が訪れます。世界の様々な足を見られるのは大変興味深いことです。診察を通して思う事は、足の色や形は様々ではありますが、足の問題は世界共通です。国ごとで異なる医療方針が存在しますが、国という『枠』にとらわれず、海を越え、国境を越えて、フットケアの重要性を日本に伝え、そしてお互い良いところは見習いながら積極的に情報交換を行うべきだと常に感じていました。
そう考えていた中、奈良県の靴下会社・岡本グループの岡本哲治社長とニューヨークでお会いし、この出会いがきっかけで2014年の3月に奈良県で行われた「日本フットケア学会」に招待講演として呼ばれる光栄な機会を承りました。そこで高山かおる先生とも初めてお会いし、日本でも健常者に対してのフットケアを広めていこうと頑張られているお話を聞き、自分と同様の目的を持っている女医さんにお会いでき、とてもうれしく思いました。その時、高山先生から「足育研究会」と言う組織を作りたい、というお話をされていたのを覚えています。
「健康は足元から」というのは本当で、偏平足が原因で、外反母趾、膝の関節炎、坐骨神経症などにつながる場合も多々あります。フットケア科は、できる限り手術を行わず、大事(おおごと)になる前に手を打つことで、痛みなく(ペインフリー)歩行できる生活を応援し、好きなスポーツを思い切って楽しむなど、生活の質を向上させてくれる重要な「科であると自負しております。症状によっては手術が避けられないケースもありますが、大抵の場合は予防をしっかり行うことで、手術を行わずに済む場合がほとんどです。
最後になりますが、日本においてフットケアの普及に努めようとする「足育研究会」が発足され、重要な一歩を踏み出されたこと、大変嬉しく思います。 アメリカという遠方からではありますが、特別顧問としてニューヨークから最先端の医療情報を、足育研究会の皆様と共有していきたいと思っております。私としても、日本語を話す数少ない足病医の1人として、私の生まれた「日本」という素晴らしい国の皆様に対して、何かしらのご奉公できれば幸いです。
高齢化社会の日本では、できるだけ寝たきりにならず、元気で楽しい生活が送れるよう足を強化していこうというコンセプト、つまり「フットケア」の重要性が将来高まるのは必至です。今後、より多くの日本人の方々が「フットケア」に対しての意識を高め、足の大切さを学び、質の高い(ハイクオリティ)楽しい人生を送っていただくことを願ってやみません。
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